日時:2019 年2 月22 日(金)14:00―16:15
場所:国際教養大学 D棟206教室
参加費:100 円(資料代等)
13:30 受け付け開始
14:00 研究会開始
14:05 発表1(30分)
「 秋田市日本語教室における講師間の関係構築を目指した試み
― 協働での教案作成の実践―」
荒井美帆(国際教養大学大学院生)
14:35 発表2(30分)
「留学を通した終助詞「ね」の使用の変化: 相互行為能力の観点から」
行木瑛子(国際教養大学)
木津弥佳(ノートルダム清心女子大学)
バルバラ・ピッツィコーニ(ロンドン大学SOAS)
15:05 休憩(10分)
15:15 話題提供者からの説明およびディスカッション(40分)
話題1:「初級クラスにおける反転授業の試み― ビデオ作成と授業の実践―」
町田絵美(国際教養大学)
話題2: 「SNSと自律学習―日本語教師はもう不要か!?―」
浜田英紀(国際教養大学)
話題3:「 超上級者に対する日本語指導」
石塚ゆかり(青森大学)
15:55 まとめ
16:00 研究会の運営について
16:15 研究会終了
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発表タイトル・要旨
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発表タイトル・要旨
(発表1)
タイトル:秋田市日本語教室における講師間の関係構築を目指した試み―協働での教案作成の実践―
発表者:荒井美帆(あらいみほ)
所属:国際教養大学専門職大学院国際教養大学専門職大学院日本語教育実践領域 修士二年
キーワード:地域の日本語教室、講師間コミュニケーション、勉強会
要旨:本発表は地域の日本語教室に携わる日本語講師の学びの場の意義について提案するものである。地域の日本語教室の形態は様々であるが、日本語講師のほとんどがボランティアや非常勤講師という立場である。また、日本語学校や大学等のように、講師同士で打ち合わせをしたり会議に参加したりする機会は少なく、連携が難しい。筆者が所属している秋田市日本語教室においてもその状況は例外ではなく、講師同士のコミュニケーション不足から成る認識のズレが生じていた。そこで、秋田市と連携し、講師同士がコミュニケーションを図れる場として勉強会を開催した。この経験から、地域の日本語教室における講師のための学びの場の意義について論じたい。
(発表2)
タイトル:留学を通した終助詞「ね」の使用の変化:相互行為能力の観点から
発表者:行木瑛子、木津弥佳、バルバラ・ピッツィコーニ
所属:国際教養大学、ノートルダム清心女子大学、ロンドン大学SOAS
キーワード:終助詞「ね」、留学、相互行為能力、日本語中上級学習者
要旨:本研究では、相互行為能力の観点から、中上級学習者10名の留学を通した終助詞「ね」の使用の変化を観察した。研究では、留学前後4回にわたって各15分のインタビューでの「ね」の使用を質的・量的に調べた。結果としては「ね」の使用が高いグループと低いグループに分かれ、低いグループは全体的に徐々に使用が増加し、留学帰国後から6か月後も発達が見られたが、高いグループは使用が減ることもあった。また、質的分析では、多用された「ね」は、教室ではあまり扱われない発話緩和の「ね」だったことが明らかになった。相互行為能力という面では、各グループから無作為に抽出した2名の学習者はいずれも発達が見られたが、グループ内の個人差を見ることが今後の課題である。
(話題提供1)
話題:初級クラスにおける反転授業の試み―ビデオ作成と授業の実践―
話題提供者:町田絵美(国際教養大学)
趣旨:2018年秋学期に、国際教養大学の初級後半の日本語クラスで反転授業を試みた。文法説明のビデオを作成してYoutubeにアップロードし、学生には授業前にそれを見てくることを課した。その結果、授業では文法説明の時間が大幅に少なくなり、その分の時間を口頭練習やペアワークにあてることができた。学期中のビデオ作成は時間的にかなり大変なものだったが、学生からのフィードバックもおおむね好評であり、春学期も継続したいと考えている。研究会当日は、ビデオの内容や作成過程、学生からのフィードバックについて報告し、参加者の皆さんからのご意見をうかがいたい。あわせて、今後他のレベルでも反転授業は可能かと言うことについて話し合いたい。
(話題提供2)
話題:SNSと自律学習―日本語教師はもう不要か!?―
話題提供者:浜田英紀(国際教養大学)
趣旨:TBA
(話題提供3)
話題:CIR(国際交流員)に対する日本語指導
話題提供者:石塚ゆかり(青森大学)
趣旨:近年、労働者不足から外国人労働者の受け入れについての議論が活発に行われるようになっています。高度な日本語運用能力を持つ超上級レベルの日本語学習者(以下、超上級者)が民間企業や行政機関で活躍する中、そのような超上級者に対して日本語研修を実施してほしいという相談を受けることがあります。今回は、このような超上級者に役立つ日本語指導について、どのようなものが考えられるか是非アイディアを提供していただきたいと思っています。
超上級者というと、JFスタンダードの尺度では「C2」、ACTFLの判定基準では「超級」という表現が使われていますが、基本的には日本語学習者の最終目標とされています。しかし、そこを到達点として考えると、超上級者には日本語が指導は必要ないことになってします。実際に、超上級者は、基本的なビジネスマナーは身につけ、職場でメールのやりとりや電話応対、会議やプレゼンテーションなどもこなしている状況です。職場の日本人からも日本語が上手な人と思われていて、仕事上日本語の問題を指摘されることはほとんどありませんが、学習者自身は自分の日本語が一流ではない、母語話者の領域には達していないなど、もどかしさを感じているようです。
超上級者からは、業務内容や求められるスキル、職場で直面した課題に合わせた指導を求める声や基本的なことを忘れているのでもう一度学び直したいという声もあります。また、もっと学びたいという意欲が強い一方で、職場の仕事に追われ、実際には学生時代のように勉強する時間が十分に取れないというのが現状のようです。
<超上級者のニーズ:アジア圏からの国際交流員の例>
・正しい話し方(ら抜き言葉や敬語など)
・美しい話し方(アクセントやイントネーション、抑揚など)
・論理的な話し方(順序立ててわかりやすく説明するなど)
・方言と標準語の違い など…
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超上級者といっても、出身国や職種、学習方法、ニーズなどは異なりますが、今回は外交官、国際交流員、通訳者、銀行員、大学教員などの様々な職種の事例をとりあげ、できる限り、実際の仕事と結びついているという意識を学習者に与えることのできるような指導を考えたいと思っています。また、民間企業や行政機関からの依頼の場合は、日本語の研修といっても継続的な指導はできず、仕事時間内に年に数回の研修しか実施できないというのが現状です。以上、ブラッシュアップを目指す超上級者への日本語指導について、ぜひ意見交換をお願いできればと思います。